まず初めに、私、独身ですよ…。
あ、すいません、twitterでいうところの「エアリプ」みたいなことをしてしまいました。
さて、今回は、僕の敬愛する安田淳一監督の最新作「ごはん」のお話です。
前作の「拳銃と目玉焼」から…何年?
「ごはん」は、安田監督の劇場公開2作目の映画です。
当然、ファン*1の僕としては行かないわけがない。
しかも、今回は舞台挨拶もあるのよ!!
っちゅーことで、観に行きました。
- 米作りエンターテインメントムービーってなんぞ?
- フツーの人たちの、フツーの物語
- お米農家の苦労が伝わってくる
- 映像へのこだわり!こだわり!こだわり!
- いぶし銀すぎる俳優陣
- 出るか!?安田無双!!
- 撮影期間4年…え?5年目に突入?
- まとめ
- おまけ
米作りエンターテインメントムービーってなんぞ?
「ごはん」は、米作りエンターテインメントムービーです。
ん?米作り…エンターテインメント?
いや、思いますよね、そう思いますよ。
米作りがエンターテインメントになるんかいな?と。
…なってました。
これが、単なる米作りムービーだったら、JAにでも任しておけばいいんですけども。
あらすじ紹介とかは、makuakeのサイトが詳しいので、ここを見るといいと思います。
えぇ、見るといいです。
他のサイトに行くのが面倒だな、と感じるレディス&ジェントルメンのために一行で書くと、
主役のヒカリが、亡き父がどんな気持ちで田んぼを守ってきたのか、米作りを通してその思いに近づいていく。
…ということです。めちゃめちゃ端折りましたが、なんとか1行でまとまりました。ほめてつかぁさい。
フツーの人たちの、フツーの物語
前作の拳銃と目玉焼もそうでしたが、主人公を含めた登場人物は、特別な人たちというわけではありません。
本当にどこにでもいそうな、OLのヒカリ。
そしてどこにでもいる(であろう)農家の人々。
なお、登場人物の9割は農家の模様。
フツーの人たちが、フツーに生活して、もう、とにかくフツーの物語なんです。
「この世界の片隅に」も観に行きました。
この映画は、普通の生活を送っている主人公が、戦争という世界が変わるほどの「普通じゃない」ことがのしかかり、その恐怖はもちろん、戦時下で「普通の生活」を保つことの大変さがビシビシ伝わってきました。
「ごはん」は、世界が変わるほどの何かが起こるわけではありません。
父親が死んで、ヒカリのこれからの「生活」が、今まで「普通」だと思っていたものが変わるわけです。
これって、僕らにもあり得ることなわけです。
だから、ヒカリと同じ目線で映画を観ることが出来ます。
とても身近な物語として、すっと入り込んでいけるのです。
緻密なまでに練り上げられているお話…ではありません。
米作りの大変さと、そして米作りを通して描かれる、親と子、それぞれの想いがメインストリームです。
とてもシンプルなお話ですから、鑑賞後は、お米作りって大変だなぁとか、親を大切にしようとか、周りの人の助けってありがたいなぁ、田んぼってあんなに綺麗だったんだなぁ…などなど、観る側もイロイロと考えることができます。
一緒に行った友達は、「いい意味で隙のある映画だ…」と言っていました。
…そこは、懐の深い映画だったとか、そういう言葉でもいいんじゃないのか、僕は思いました。
お米農家の苦労が伝わってくる
劇中のヒカリのお父さん、始(ハジメ)は、たんぼを「預かって」お米を育てる、小作農家。
始がなぜ、田んぼを預かるのかというと、そこには現在のお米農家が抱える問題が影響しています。
現在、日本の米農家において、高齢化、そして後継者不足が重くのしかかっています。
そのため、若くて*2元気な農家に田んぼを預けてお米を作ってもらうしかないのだそうです。
そのような背景で、頼まれたら断れない性分の始が田んぼを引き受けているうちに、預かった田んぼは30軒に。
広さは5町で甲子園球場4つ分にまで膨れ上がります。(うろ覚え)
そして、始が亡くなったことで、結果的に、ヒカリが引き継ぐことになります。
劇中ではまず、米作りに関して右も左もどころか、上下左右前後不覚って感じのヒカリは、始の下で米作りに携わっていた源ちゃんのアドバイスを聞いて、田んぼの水の管理に奔走します。
水の管理?とにかく自分の田んぼに水引いときゃいいだろ、と思ったら大間違いで、隣近所の田んぼが何してるかも気をつけなきゃいけない。
好き勝手に水入れたらあかん!うちの田んぼつぶす気か!みたいな感じで近所の農家から激怒されるシーンもあります。
我田引水には気をつけましょう(我田引水の意味、多少違うけどね)
水の管理*3もそうですが、大規模な田んぼを少ない人数で米作りするには欠かせないのが耕作機械。
一度は耳にしたことがあるでしょう、コンバイン。
コンバインのほかに、刈り取ったお米を乾燥させる乾燥機や、良質なお米により分ける米選機などなど、とにかく金がかかるんです!!
とりあえずヤンマーのホームページ見てみました。
最近は、フェラーリやマセラティ、ドゥカティなど、世界的メーカーでデザインを手がけたことでも有名な奥山氏が取締役に就任したこともあり、およそコンバインとは思えないようなソフィスティケイトされた製品が多いです。
そして価格…。
NISSANの現行GT-R買えちゃうよ!!コンバイン(の価格)は高級スポーツカー並みです。
手間・暇・金をそこまでつぎ込んでも、ゲリラ豪雨や台風であっちゅーまにダメになっちゃう田んぼ。
米作りは苦労の連続です。
映画だからこんなに苦労してるんじゃありません。
ちゃんと米作りの事実が描かれているんですよ。
映像へのこだわり!こだわり!こだわり!
「こだわり」という文字がゲシュタルト崩壊するくらいにこだわってます。
一番最初の新幹線のシーン、車窓から流れていく景色。
緑鮮やかな稲。
その稲を揺らして吹く風。
夕暮れ時、金色に染まる田んぼ。
田んぼに生きるカエルやタニシ。
刈り取り後の田んぼ。
時間や、その季節、天候によって、また、視点を変えることで、何でもないと思っていた田んぼで、こんなにも様々な景色が見れることに驚くことでしょう。
いぶし銀すぎる俳優陣
拳銃と目玉焼に出演されていた、小野孝弘さん*4、鈴木ただしさん*5、多賀勝一さん*6 、戸田都康さん*7、紅壱子さん*8…などなど、顔と名前が一致しませんが、源ちゃんの主治医で出演されていたり、様々なシーンでみることが出来ました。
で、劇中でフツーのやり取りをしてるんですが、これがまた自然でね。
そして…
台詞は多くありませんが、存在感のある父親を演じてらっしゃいましたよ。
さらに…
ヒカリの米作りを影ながら支える優しい西山老人役には、日本一、いや、世界一の斬られ役、福本清三さん。
優しい西山老人と書きましたが…いや、ただ単に優しいだけではなく、なんというか、つわもの感があふれ出てるんですけれども…。
これは監督の演出プラン、映像の妙なのでしょうか、もともと福本さんが持つオーラが見えちゃってるからなのでしょうか。
あとね、西山老人の、中の人が福本さんだと分かってるだけに、面白い「あるシーン」が一瞬あるんですが、いやぁ…これは実際に観て確かめてもらいたい。 とっても粋なシーンがあるのです。
出るか!?安田無双!!
拳銃と目玉焼では、撮影、照明、音響と、エンドロールでとにかく安田監督の名前が何回も出ていて、それを勝手に安田無双と読んでおりました。
今回のエンドロールでも無双なのか!?と見てましたが、実はちゃんと確認できてません。
なぜかというと…
ちょっとネタバレになりますが、エンドロールでは出演者・スタッフのクレジットが表示される隣で、お米ができるまでの過程がマンガチックに展開されまして。
それがなかなかに面白く、そっちを見てたからなのです。
そうそう、クラウドファンディングで出資してるので、僕の名前(本名)も出てるのです。
ちょんハリ師匠に出来ればよかったけど、6文字までの制限があったし、作品の品位を落としかねないので、本名です。
無理やり「ちょんハリ師」にすると「鍼灸師か何かかな?」と思われるかもしれんし。*9
で、そんな自分の名前の部分ですが…
うっかり見逃した。
撮影期間4年…え?5年目に突入?
上映後、舞台挨拶がありました。
安田監督、沙倉ゆうのさん、源八さん、井上肇さんが登場。
安田監督の挨拶で、「ごはん」の追加撮影あるかも発言があり、源八さんは「2,3日のつもりが4年になり、先ほどの監督の(追加撮影)発言で、5年目突入でしょうか」と会場の笑いを誘っていました。
井上さんは、「最近では、3か月から、長くても半年で映画を撮ることが多いのですが、これだけ長い期間、一つの作品をこだわって撮るのは贅沢なこと」と仰ってました。
そして、沙倉ゆうのさ…ゆうのちゃん。相変わらず直視できず。
うっかりすると、彼女のことばっかり書いちゃうので、グッとおさえます。
今回はセリフが少なかったので、ヒカリの感情を表現するのにとても苦心したそうです。
いやでも、前作のときよりも、演技力が格段に向上してたと思います。
ヒカリは女性ですが、おっさんの僕でも感情移入して見てましたから。
…上から目線っぽい、なんか嫌ーな書き方になってますが、
えと、最後に一言だけ。可憐でした…。
The Spandettes - Calendar Girl (Live Acoustic Version)
↑カレンダーガール。可憐だーが…なんでもないです。
そうそう、舞台挨拶で安田監督は、劇場に見に来ていた甥っ子さんに向けて、こんな話をしていました。
「何かを始めるときに、すべて準備してからやる人がいますが、自分はそうではありません。
行けるんちゃうかと思ったら、見切り発車でもやり始めてしまう。
そうして、周りの人の力を借りて、その人たちに支えられて、映画を作ることができました。
そういう創作スタイルもあっていいと僕は思ってます。
…なんて、甥っ子の前でカッコつけてみました(笑)」
とりあえず、動いてみよう、やってみよう、という姿勢が大事なのだと。
僕は、「ごはん」はそれだけで作られたものではないと思います。
動き始めてから「途中でやめなかった」こと、そして「支えてくれた人たちへの感謝」が常にあったからこそ、作品になったんだと思いますよ。
監督は、当たり前のことを、当たり前に、自然にできてるんだと思います。
…また、上から目線っぽくなってしまった。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。
今回の、「監督!新宿の舞台挨拶に観に行けなくてごめんなさい」あらため、「やっぱり沙倉ゆうのさんを応援したい…!!」
「ごはん」は、クラウドファンディングで出資した結果、10枚も前売り券をもらってしまったので、友達を誘って行きました。
その友達からも、「いい映画だった…」という感想*10を聞けたので僕は満足です。
心暖まる映画と書くと、急に陳腐化してしまいますが、やっぱり実際に観てもらうのが一番です。
この映画を観れば、カラカラになった、あなたの心の田んぼも潤うことでしょう…
なんつって!!(←台無し)
大手シネコン系では、1月27日で一旦上映は終わりますが、今後も各地で上映が控えております。
観に行く機会があれば、ぜひとも足をお運びくださいませ!
そうそう、安田監督は「ごはん」については劇場と言わず、いろんなところで上映できるようにしたい、と仰ってました。
自分としては、中学生、高校生が見ると面白いんじゃないかなぁ、と勝手に思ってます。
高齢者の農家の方々が見てももちろん楽しめると思いますが、若い人たちが見て、米作り大変!ありがたや!ってなったらいいですなぁ。
見たい…けど劇場が遠い!という皆様に置かれましては、未来映画社へコンタクトを取ってはいかがでしょうか。*11
「ごはん」鑑賞後は、何気なく口に運ぶお米一粒一粒のありがたみが増しますよ~。
糖質制限ダイエットは一旦忘れて、ごはん食べましょうね。
ごちそうさまでした…と書きたいところですが、また観たいので「おかわり!」
現場からは、以上です。
おまけ
劇中でコンバインがドナドナされるシーンがあるのですが、愛車(バイク)がドナドナされたときのことを思い出しましたwww。
あと、安田監督とチャック・ノリスがダブって見える…
*1:と自称していますが、ファンと名乗れるほどのものではない、クソ消費者の一人
*2:といっても、若者というわけではなく…
*3:…のほかにもやることたくさんあるけどね
*4:今回は出番は控えめでしたが
*5:おそらく、前作の893稼業から足を洗ったのだろう
*6:前作から新聞はやめて、農業一本にしたのだろう
*7:タクシーやめたのだろう
*8:おそらく、喫茶ノエルのママは双子の妹
*9:そもそもそこまで見られないので、まさに杞憂
*10:あと、源ちゃんから目が離せなかった、ヒカリがダークサイドに落ちかけるシーンが良かった、とも
*11:当然ですが、お呼びする、来ていただく、というスタンスで、失礼のないように…。