ときは今から5年前にさかのぼる。
2008年の9月。
俺は都内の事務所の一室で、
パソコンをいじっていた。
ぽちぽち。
ぽちぽちぽち。
このとき、俺は27歳。
親父が死んで1年。
家には、お袋と、妹と、犬(チワワ)。
当時、好きだった女性と、ドライブに出かけて、
家族が穏やかに過ごせれば、それでよかった。
現状を維持。
上昇志向なんて言葉、頭のどこにもなかった。
そんな俺を襲った世界的事件がある。
リーマン・ショックがやってきた。
そう、リーマン・ショックだ。
だが、日本のリーマンはまだショックを受けていなかった。
ショックが海を超えるには、少し時間がかかった。
だが、確実にそのショックは、
日本に迫りつつあった。
しかし、そんなことにはお構いもなく。
毎日、キーをたたき続ける。
ぽちぽち。
ぽちぽちぽち。
今日も、明日も、明後日も。
ぽちぽち。
ぽちぽちぽち。
そうこうしているうちに、日は流れ。
ついに、リーマン・ショックが会社を襲う。
12月になり、社内でも始まった。
何が始まったかって?
リストラだよ、リストラ。
どんどん切られていった。
ぶっちゃけ、俺はコネ入社だったため、切られなかった。
が、
まともな経営者なら、真っ先に切るべきは俺だ。
なぜなら、成果が出ていない。
出るのは赤字だけだ。会社のお荷物だ。
自分でもそう思っていた。
申し訳なく思いながらも、ただただ、リストラが断行されているのを見ていることしかできなかった。
退職まであと 1年 3か月