まるでちょんまげハリウッド

ちょんはり師匠の生きざまを切り売りしています。

イチオシは転職体験記!それ以外は、いい歳したオッサンの反省です。反省はしますが、後悔はしていません。たぶん。

パプリカたろう

Paprika

むかーしむかしのことじゃった。

あるところに、おじいさんと、おばあさんと、その息子と娘が住んでおった。

核家族じゃった。

おじいさんは山へ芝刈りに。

おばあさんは川へ洗濯に。

息子と娘は繁華街へと毎日足しげく通っていた。

ある日のことじゃった。

娘が繁華街から帰ってこなくなった。

駆け落ちじゃった。

おじいさんとおばあさんも駆け落ちじゃったので、
「血は争えんな」と、何も言わなかった。

そうして半年の月日が流れた、またある日のことじゃった。

おじいさんが朝刊を取りに玄関へ出たところ、黒づくめの男たちが押し寄せてきた。

「な、なにごと!?」

おじいさんが黒づくめの中の一人に尋ねると、男は

「警察だ!お前の息子に逮捕令状が出ている!」

と告げ、逮捕令状、捜索差押令状を見せると家の中に押し入り、あっという間に息子を連れだしてしまった。

なぜ息子が逮捕されるのか皆目見当はつかなかったが、そういえばなんだか最近不可解な言動があったり、焦点の定まらないくすんだ目で虚空を見つめているかと思えば、きっかけなしに突然笑いだしたり。

見当がつき、思い当たるふしもあったので「そういうことだったか…」とあきらめた。

おじいさんとおばあさん二人暮らしになってから、また月日が流れた。

今日もおじいさんは山へ芝刈りに。

おばあさんは川へ洗濯にいく。

しかし、家に暖炉はなく、風呂も全自動湯沸かし器がついている。

洗濯機も、最新の乾燥機能付き洗濯機が備え付けてあった。

にもかかわらず、おじいさんは芝刈りに行っていた。

否、しばかれに行っていた。

ドMじゃった。

おばあさんは洗濯に行くと見せかけ、若いつばめとの逢瀬を重ねていた。

おばあさんが選択したのは、そっちじゃった。

そんなある日、おばあさんが彼ぴっぴのSUV(えすゆーぶい)で自宅近くの川を通りがかると、川上から、それはそれは大きなパプリカが流れてきた。

ぺんどらごん、ぺんどらごん・・・パプリカは流れていた。

おばあさんは

「これめっちゃバズる!」

と思い、彼ぴっぴにパプリカを拾い上げてもらい、そのまま自宅へと送り届けてもらった。

自宅に戻ると、おじいさんが既に帰っていた。

おじいさんと、おばあさんと、パプリカ、そしておばあさんの彼ぴっぴ。

なんだこれ。

彼ぴっぴは一瞬思考が停止した。

おばあさんは・・・

「たまたまクリーニング屋さんの帰りに川で大きなパプリカを見つけたものだから。」

苦しい言い訳をその場に放った。

彼ぴっぴは、おじいさんが顔を真っ赤にしていたので何も言わず、パプリカを家の中に運んで「じゃあこれで・・・」と、そそくさとその場を後にした。

おじいさんは彼ぴっぴをみて、川へ洗濯に行ったはずのおばあさんが何をしていたか、すべてを悟った。

しかし、おじいさんはドMかつNTR願望がある特殊な性癖の持ち主だったため、興奮のあまり言葉が出なくなっていた。

それどころか「クリーニング屋て!!ぎりぎり洗濯のていを保とうとするの、無理ありすぎじゃ!!」と、あまりの苦し紛れっぷりに笑いをこらえるのに精いっぱいだった。

ともあれ、おじいさんとおばあさんは巨大なパプリカを前に、ひとしきり写真をとり、各種SNSへと投稿することにした。

このクソ仮面夫婦がようやく投稿を終えたころ、パプリカが小刻みに揺れ出した。

次の瞬間、パプリカに横一文字の切れ目が走り、中から赤ちゃんが現れた。

「おぶぅえええええ・・・」

口からすっぱいにおいのする液体を吐き出し、その場にぐったりと倒れた。

長時間、ぺんどらごん・・・ぺんどらごん・・・と揺られ続けていたこと、そしてその揺れが突然おさまり長時間放置されたことで、船酔い&陸酔いのダブルパンチ状態の赤ちゃんがついに限界に達したのだった。

おじいさんとおばあさんはあまりの「すいぃニオイ」とあまりの「グッタリっぷり」にパプリカの中から赤ん坊が出てきたことに驚くことを忘れていた。
そして我に返り「人死にはやべぇ・・・」と、赤ちゃんを抱き浴室で洗ってやることにした。

抱きかかえて分かったのだが、この赤ん坊、やたらとガタイがいい。

実はこの赤ちゃん、そこそこ長い間パプリカの中に閉じ込められていた。
激流に揉まれ、その揺れに耐えるべく空洞のパプリカ内部で手足を伸ばして踏ん張っていた結果、人智を超えた筋力、そして神をも恐れぬ体幹を獲得したのだった。

そうとは知らず、赤ん坊をあやしながらお湯につけるおじいさん。

それにじゃれつく赤ん坊。

「だぁー、だぁ・・・♪」

「おぉー、よしよし、これこれ、じぃじのひげで遊ぶでない^^。じぃじのひげはおもちゃでは・・・」

次の瞬間・・・おじいさんのあごに焼けるような痛みが走る。

「んんふぅーーーー!!!!!」

悪魔のごとき怪力で、おじいさんのひげを抜き取った赤ん坊。

痛みに悶絶するおじいさん。しかしなぜかほほを赤く染め、瞳はうるんでいた。

「まぁまぁ、おじいさんは赤ん坊をあやすのが下手ですねぇ。」

この、ドMめ・・・。口には出さないまでも、蔑んだ視線を送りながら、今度はおばあさんが赤ん坊を抱きかかえる。

「キャッキャッ♪」

「おじいさん、こうするんですよ。私が手本を見せ・・・あふんっ!!??」

赤ん坊の手が、おばあさんの胸をわしづかみにしていた。

先ほどのおじいさんのひげを抜き取った悪魔のような怪力はではなく、天使の羽が包み込むがごとく、それはそれは優しいわしづかみじゃった。

まだ50台半ばのおばあさん。若いつばめによって開発されたおばあさんのカラダから、思わず甘い吐息がこぼれたのじゃった。

つづく。

パプリカ

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